はじめに
アルバイトが決まって安心していたら、店長から「じゃあ初日までに書類そろえといてね」と言われて、何のことかわからず困ってしまいました。そんな経験はありませんか。
日本の職場では、入社の手続きが日本語だけで進むことがほとんどです。しかも「マイナンバーわかる?」「口座は持ってる?」と一度にまとめて聞かれるので、その場では「はい」と答えても、家に帰ってから何を用意すればいいのか思い出せません。よくある話です。
この記事では、アルバイトを始めるときに職場へ出す書類を、実際の順番どおりに紹介します。「制度がどうなっているか」ではなく、「初日までに、何を、どこで手に入れるか」だけに絞っています。週28時間のルールや資格外活動許可(しかくがいかつどうきょか・決められた範囲を超えて仕事をするための許可)そのものについては、こちらの記事で詳しく説明しています。気になる人はあわせて読んでみてください。
本記事は情報提供を目的としたもので、法的な助言ではありません。制度は変更される場合があるため、手続きの前に各公式サイトで最新の情報を確認してください。
初日までに揃える書類は3種類に分けて考える
書類の話がややこしく感じるのは、違う種類のものが一緒に説明されるからです。実際には次の3つに分かれます。
- ほぼ全員が求められるもの(5点)
- 人によって求められるもの(働く時間や過去の職歴で変わる)
- 会社から渡されるもの(自分で用意するのではなく、受け取る側)
この3つの違いがわかっていれば、店長に何を言われても落ち着いて対応できます。
早見表:何を・どこで手に入れるか
| 書類 | 何のために使うか | どこで手に入るか | かかる日数 |
|---|---|---|---|
| 在留カード | 働ける身分かどうかの確認 | すでに持っている | — |
| マイナンバー(カードか住民票) | 税金・保険の手続き | 市役所・区役所 | カードは1か月前後、住民票は当日 |
| 銀行口座の情報 | 給与の振り込み | 銀行・郵便局 | 口座開設は当日〜2週間 |
| 日本の電話番号 | シフトの連絡 | 携帯ショップ・オンライン | 即日〜数日 |
| 緊急連絡先 | 事故や急病のとき | 自分で決める | — |
初日から逆算したスケジュール
大変なのは、役所や入管に行かないと手に入らない書類があることです。当日に気づいても間に合いません。初日から逆算して、早めに動きましょう。
| いつ | やること |
|---|---|
| 2週間〜1か月前 | 資格外活動許可を持っていない人は入管へ申請する。ここが最優先 |
| 1〜2週間前 | 銀行口座がない人は開設に動く。日本の電話番号も用意する |
| 3日前 | マイナンバーカードがない人は、市役所でマイナンバー入りの住民票を取る |
| 前日 | 在留カードの裏面を確認。書類をまとめてカバンに入れる |
| 当日 | 在留カードとパスポートは原本を持参。コピーだけで済ませない |
資格外活動許可の申請には、入管の混み具合によって2週間から1か月ほどかかります。「先に働いて、あとから許可を申請すればいい」という考えは危険です。許可が出る前に働いた時間は、すべて不法就労として扱われます。
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ほぼ全員が求められる5点
在留カード:裏面の許可を必ず確認する
まず在留カードの裏面を見てください。下のほうに「資格外活動許可欄」(しかくがいかつどうきょからん・アルバイトが許可されているかを示す欄)という枠があります。ここに「許可(原則週28時間以内。一部の仕事は禁止されています)」といったスタンプが押されていれば、アルバイトができます。
この欄が空白のまま働き始めると、たとえ本人に悪気がなくても不法就労(ふほうしゅうろう・許可なく働く違法行為)になります。ビザの更新が通らなくなったり、最悪の場合は在留資格が取り消されたりします(参照:出入国在留管理庁「資格外活動許可申請」)。
職場では、在留カードの表と裏の両方をコピーされるのが一般的です。裏面まで撮られるのは、この許可欄を確認するためです。会社には、外国人を雇ったことをハローワーク(仕事を紹介する公共の窓口)に伝える義務があります。コピーを求められること自体は正しい手続きなので、心配しなくて大丈夫です。
家族滞在の在留資格でアルバイトをする場合も、必要になる許可は同じです。詳しくはこちらの記事で確認してください。
在留カードは原本を持っていってください。「スマホで撮った写真があるから大丈夫」と思いがちですが、原本の提示を求める会社がほとんどです。
マイナンバー:カードがないなら住民票が要る
多くの人が、ここで困ります。
会社は、税金の手続きや社会保険の届け出のために、働く人のマイナンバーを集める必要があります。このとき法律で決まっているのは、「番号が正しいことの確認」と「本人であることの確認」を両方やるというルールです。つまり書類が2種類必要になる場合があります(参照:国税庁「番号法令、国税庁告示における主な本人確認書類等」)。
持っているものによって、必要な組み合わせが変わります。
| 持っているもの | 職場に出すもの |
|---|---|
| マイナンバーカード | カード1枚で完結(表で本人確認、裏で番号確認) |
| 通知カード(住所・氏名が住民票と一致している場合) | 通知カード+在留カード |
| どちらもない | マイナンバー入りの住民票+在留カード |
ここで注意してほしいのが、「個人番号通知書」は使えないという点です。マイナンバーの通知カードは2020年5月25日に廃止され、その後に新しく番号が割り当てられた人には「個人番号通知書」という紙が送られます。ところが、この紙では番号の証明も本人確認もできません(参照:総務省「個人番号通知書」)。
つまり、来日してからマイナンバーカードを作っていない人は、市役所でマイナンバー入りの住民票を取る必要があります。住民票を請求するときに「マイナンバーを記載してください」と伝えないと、番号なしの住民票が出てきてしまうので、そこだけ気をつけてください。
なお在留カードは、身元確認の書類としてそのまま使えます。これは覚えておくと便利です。
2026年6月からは、在留カードとマイナンバーカードを1枚にまとめる特定在留カードが始まっています。これから作る人は、先にこちらの記事を読んでおくと二度手間を避けられます。
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給与振込用の銀行口座
給料は基本的に銀行振込です。職場には、銀行名・支店名・口座番号・口座名義を伝えます。通帳やキャッシュカードのコピーを求められることも多いので、口座を作ったときに渡された書類は捨てずに取っておいてください。
よく間違えるのが名義の書き方です。日本の口座名は、カタカナで登録されています。パスポートのローマ字表記と口座のカタカナ表記が少しでも違うと、給料の振込ができないことがあります。口座を作ったときにもらった書類を見ながら、そのとおりに書き写してください。
もうひとつ、会社によってはネット銀行を給与振込先に指定できないことがあります。就業規則(しゅうぎょうきそく・会社の働き方のルール)で、振込先の金融機関が決められている場合があるためです。ネット銀行しか持っていない人は、応募の段階か初日までに確認しておくと安心です。
まだ日本の口座を持っていない人は、来日6か月以内だと作れる銀行が限られるので、早めに動いたほうがいいです。
日本の電話番号
シフトの連絡や急な欠員の相談は、電話かSMS、あるいはLINEで来ます。海外の番号だとSMSが届かないことがあるため、日本の番号を持っていない人はほぼ確実に用意を求められます。
まだ日本の番号がない人は、外国人専用SIMカード YOLO MOBILEのように在留カードだけで契約できるサービスから始めるのが早いです。SIMの選び方は、こちらの記事にまとめています。
緊急連絡先
仕事中に事故や急病があったときに、会社が連絡を取る相手です。日本国内で連絡が取れる人を求められることがほとんどで、母国の家族の番号だけでは足りないと言われるケースがあります。
学校の担当の先生、同居している友人やルームメイト、日本に住んでいる親戚など、事前に一人決めて、本人にも「緊急連絡先に書いていい?」と伝えておきましょう。当日になって慌てて考える人が多い項目です。
人によって求められる書類
ここからは、状況によって求められたり求められなかったりする書類です。すべて用意する必要はありません。
源泉徴収票(げんせんちょうしゅうひょう) その年(1月から12月まで)に他の職場で働いていた人が対象です。年末調整(ねんまつちょうせい・年末に1年分の所得税を計算し直す手続き)で使います。前の職場を辞めたときに渡されているはずなので、探してみてください。見つからない場合は、前の職場に再発行を頼めます。
雇用保険被保険者番号(こようほけんひほけんしゃばんごう) 過去に雇用保険に入ったことがある人だけが対象です。学生として初めて働く人には関係ありません。
基礎年金番号通知書(きそねんきんばんごうつうちしょ) 年金の手続きで番号が必要になる場合があります。ここで注意したいのが、年金手帳は2022年4月に廃止されているという点です。それ以降に年金制度に加入した人には、年金手帳ではなく「基礎年金番号通知書」が送られています。「年金手帳を出して」と言われても、手元にないのが普通です(参照:日本年金機構)。
しかも今は、マイナンバーで届け出をすれば年金手帳や基礎年金番号通知書の確認そのものが不要になっています。「持っていない」と正直に伝えれば、会社側で処理できることがほとんどです。年金制度の全体像は、こちらの記事で説明しています。
健康診断書(けんこうしんだんしょ) アルバイトでも求められることがありますが、法律上の義務があるのは条件を満たす人だけです。雇入れ時の健康診断が義務になるのは、1年以上働く見込みがあり、週の労働時間が正社員の4分の3以上の人です(参照:労働安全衛生法第59条・労働安全衛生規則第43条に基づく取扱い。厚生労働省の労働局が公開する解説)。正社員が週40時間なら30時間が目安になります。
留学ビザの人は週28時間が上限なので、この基準には届きません。つまり法律上の義務としては対象外です。それでも会社の方針で提出を求められることはあるので、その場合は学校の健康診断の結果を使えないか聞いてみてください。実費で受けると5,000円から10,000円ほどかかります。
住民票(じゅうみんひょう) マイナンバー入りのものを求められるケースが多いです。市役所・区役所の窓口のほか、マイナンバーカードを持っていればコンビニのコピー機でも取れます。窓口だと300円前後、コンビニだとそれより安いことが多いです。
会社から渡される書類とサイン前の確認ポイント
ここからは自分で用意するのではなく、会社から受け取る書類です。
労働条件通知書(ろうどうじょうけんつうちしょ) これが最も重要な書類です。時給、シフト、勤務地、仕事の内容、契約期間といった条件を書面で示すもので、会社にはこの書類を渡す法律上の義務があります。アルバイトも対象です。
2024年4月から、書かなければならない項目が増えました。今の勤務地や仕事の内容だけでなく、将来的にどこまで変わる可能性があるか(変更の範囲)まで書く必要があります。有期契約(ゆうきけいやく・契約期間が決まっている働き方)の場合は、更新の上限があるかどうかも書面に書く必要があります。この義務を守らない会社には、30万円以下の罰金があります(参照:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」)。
雇用契約書(こようけいやくしょ) 労働条件通知書と内容が重なることが多く、両方を1枚にまとめている会社もあります。サインをする前に、次の5点だけは必ず自分の目で確認してください。
- 時給の金額と、深夜・残業のときの割増
- シフトの入り方(週何日・何時間か、希望をどう出すか)
- 交通費が出るかどうか、上限はいくらか
- 試用期間(しようきかん・採用直後の見極め期間)があるか、その間の時給は下がるか
- 契約期間と、更新があるかどうか
秘密保持に関する書類(ひみつほじにかんするしょるい) お客さんの情報や社内のやり方を外に出さない、という約束です。SNSへの投稿を制限する内容が含まれることもあります。
「書類は後で渡すから、今日から入って」と言われても、口約束のまま働き始めるのは避けてください。時給や勤務時間でトラブルになったとき、書面がないと何も証明できません。
働き始めてからの権利、たとえば有給休暇や残業代のルールについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
保険はどうなるのか
「アルバイトでも保険に入るの?」という疑問はよく聞きます。学生かどうかで、答えが変わります。
労災保険(ろうさいほけん・仕事中のケガを補償する保険):全員が対象 仕事中や通勤中のケガを補償する制度です。働く時間や雇用の形に関係なく、働く人は全員自動的に対象になります。手続きも保険料の負担もありません。バイト中にケガをしたら、健康保険ではなく労災を使います。ここは覚えておいてください。
雇用保険(こようほけん):昼間の学生は対象外 本来は「週20時間以上」と「31日以上働く見込み」の両方を満たす人が加入する制度です。ただし、昼間の学校に通う学生は入りません。学生は勉強が中心だという考え方によるものです。そもそも留学ビザの人は週28時間が上限なので、この条件に当たる人は少ないです。夜間部や通信制の学生、休学中の人は例外として加入対象になることがあります(参照:厚生労働省「雇用保険制度」)。
健康保険(けんこうほけん)・厚生年金(こうせいねんきん):昼間の学生は原則対象外 こちらも昼間の学生は原則として加入しません。留学生の多くは国民健康保険に自分で入っているはずなので、そちらを続けることになります。
つまり、留学生が普通にアルバイトをする範囲では、勤務先の保険に入る場面はほとんどないということです。「保険料が引かれるのでは」と心配する必要はありません。ただし家族滞在や定住者などで、学生ではない人が週20時間以上働く場合は話が変わります。
税金のほうは別の話です。給料からは所得税が引かれますし、年収によっては扶養や在留資格に影響が出ることもあります。詳しくはこちらの記事を読んでください。
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よくある失敗5つ
1. 在留カードの裏面の許可を確認しないまま働き始めた 件数が多く、影響も大きい失敗です。店長が確認しなかったとしても、責任は働いた本人にあります。初日の前に必ず自分の目で見てください。
2. 掛け持ちしていることを伝えなかった 複数のバイトをしている場合、週28時間はすべての職場の合計で計算されます。片方の店に黙っていても、税務の手続きで結局わかります。それに、扶養控除申告書(ふようこうじょしんこくしょ・税金の扶養家族を会社に伝える書類)は1か所にしか出せない決まりがあるので、隠していると税金が正しく計算されません。
3. 口座名義のカタカナとローマ字が一致していない 振込ができなくなって、給料日が遅れてしまいます。口座を作ったときの控えを見ながら書き写しましょう。
4. マイナンバーを口頭で伝えて記録が残らなかった 「番号だけ教えて」と言われて口で伝えても、後から書類が必要になって二度手間になるパターンです。会社には確認の義務があるので、結局は書類を求められます。最初から住民票かカードを用意しておくほうが早いです。
5. 印鑑が必要だと当日に知った 書類にサインではなく押印(印鑑を押すこと)を求める会社がまだあります。しかも、インクが中に入っているタイプの印鑑は使えないと言われることがあります。100円ショップでも買えるので、心配なら一本用意しておくと安心です。
FAQ(よくある質問)
Q: 資格外活動許可がまだ取れていません。初日は行っていいですか?
A: 許可が出るまでは働けません。研修や説明だけの日でも、給料をもらう時間はすべて働いたことになります。まず職場に事情を伝えて、開始日をずらしてもらってください。正直に相談すれば待ってくれる職場がほとんどです。黙って働き始めるほうが、ずっと大きなリスクになります。
Q: マイナンバーカードを持っていません。何を出せばいいですか?
A: 市役所か区役所で「マイナンバーが記載された住民票」を取って、在留カードと一緒に提出してください。この2点の組み合わせで手続きができます。窓口で請求するときに「マイナンバーを載せてください」と伝えるのを忘れないでください。番号なしの住民票では使えません。
Q: 海外の銀行口座やネット銀行を給与振込先に指定できますか?
A: 海外の口座は原則として指定できません。ネット銀行は会社によります。就業規則で振込先の金融機関が決まっている場合があるので、初日より前に確認しておくと安心です。
Q: 印鑑は必ず必要ですか?
A: 会社によります。サインだけで済むところも増えていますが、押印を求める職場もまだあります。求められる場合、スタンプ式ではなく朱肉を使うタイプの印鑑を指定されることがあります。
Q: 掛け持ちしていることを新しいバイト先に言わないとダメですか?
A: 伝えてください。週28時間の上限は全部の職場の合計で見られるので、片方が把握していないと知らないうちに超えてしまいます。働きすぎは、ビザの更新に直接影響します。
Q: 家族滞在の在留資格でも、必要な書類は同じですか?
A: 基本の5点は同じです。違うのは保険についてです。学生ではない人が週20時間以上働く場合は、雇用保険の対象になることがあります。資格外活動許可が必要な点は、留学ビザと同じです。
Q: 労働条件通知書をもらえませんでした。どうすればいいですか?
A: まず職場に「書面でもらえますか」と聞いてください。会社にはこの書類を渡す義務があるので、渡してほしいと言うのは当然のことです。それでも出てこない場合は、住んでいる地域の労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ・労働問題を相談できる役所)に相談できます。多くの労働局には外国語で相談できる窓口があります。
まとめ:初日の朝に見直すチェックリスト
書類の準備は、一つずつ見れば難しいものではありません。ただ、役所や入管に行かないと手に入らないものがあるので、気づくのが遅れると初日に間に合わないという点だけが大変です。
家を出る前に、これだけ確認してください。
- 在留カード(原本・裏面の許可を確認済み)
- パスポート
- マイナンバーカード、または「マイナンバー入りの住民票+在留カード」
- 銀行口座の情報(通帳かキャッシュカード、名義のカタカナ表記も)
- 日本の電話番号を書けるようにしておく
- 緊急連絡先の名前と番号(本人の了承済み)
- 念のため印鑑
そして初日に受け取る労働条件通知書は、その場で目を通してください。時給とシフトと交通費。この3つが聞いていた話と合っているかだけでも、確認する価値があります。あとから「思っていたのと違う」となったとき、書面が自分を守ってくれます。
書類の準備が整ったら、次は自分に合ったシフトの仕事を探す番です。YOLO JAPANなら日本語のレベルやエリアで絞り込めるので、「日本語がまだ不安」という段階でも応募できる求人が見つかります。