日本の会社で働くと、毎月の給料から、税金や保険料が引かれます。給与明細を見て「なぜこんなに引かれるの?」「2年目から急に手取りが減った」と感じる人もいるでしょう。
この記事では、会社員の給料から引かれるお金の種類と、給与明細の見方、住民税が1年目にない理由、年末に会社がする年末調整(ねんまつちょうせい)について、国税庁や総務省などの公式情報をもとにまとめました。
日本の税金の全体の仕組みや、自分でする確定申告については、それぞれ別の記事で紹介しています。この記事では、会社員の「毎月の天引き」と「年末調整」を中心に説明します。
この記事は2026年10月時点の公式情報をもとにした一般的な情報です。引かれる金額は、給料、住んでいる場所、年齢、家族の状況などによって変わります。自分の金額は、会社の担当者や、住んでいる市区町村に確認してください。
1. 給与明細の見方
給与明細は、だいたい次の3つの部分に分かれています。
| 部分 | 何が書いてある? |
|---|---|
| 支給 | 基本給、残業代(時間外手当)、通勤手当など、会社が払うお金 |
| 控除(こうじょ) | 税金や保険料など、給料から引かれるお金 |
| 差引支給額(さしひきしきゅうがく) | 支給から控除を引いた、実際に口座に振り込まれる金額(手取り) |
控除の欄によく出てくる項目は、次のとおりです。
| 給与明細の言葉 | どんなお金? |
|---|---|
| 所得税(源泉所得税) | 国に払う税金。会社が毎月の給料から引いて、本人の代わりに納める |
| 住民税 | 住んでいる市区町村と都道府県に払う税金 |
| 健康保険 | 病院にかかるときの医療費などのための保険料 |
| 介護保険 | 40歳から64歳までの人が、健康保険と一緒に払う保険料 |
| 厚生年金 | 年をとったときなどに受け取る年金のための保険料 |
| 雇用保険 | 仕事を失ったときの給付などのための保険料 |
| 子ども・子育て支援金 | 2026年4月分から始まった、子育てを支えるためのお金 |
会社によって、項目の名前や並び方が違うことがあります。わからない項目があれば、会社の担当者に聞いてみましょう。
2. 給料から引かれるものと、決まり方
| 引かれるもの | 金額の決まり方 | いつから? |
|---|---|---|
| 所得税 | その月の給料から社会保険料を引いた額、扶養控除等申告書を出しているか、扶養する家族の人数で決まる | 最初の給料から |
| 住民税 | 前の年の所得で決まる | 前の年に日本で収入がなかった人は、働き始めた次の年の6月ごろから |
| 健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金 | 給料の額(標準報酬月額:ひょうじゅんほうしゅうげつがく)と保険料率で決まる | 保険に入ってから(給料から引かれる時期は会社によって違う) |
| 厚生年金 | 給料の額(標準報酬月額)と保険料率で決まる | 加入した月の分から(給料から引かれる時期は会社によって違う) |
| 雇用保険 | 給料の額と保険料率で決まる | 加入してから(給料から引かれる時期は会社によって違う) |
税金は「所得税」と「住民税」の2つです。それ以外は、社会保険などの保険料です。
(参照:国税庁 No.2511/日本年金機構「月の途中で入社・退職したときの厚生年金保険料」/日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」)
3. 所得税(源泉徴収)
所得税は、会社が毎月の給料から引いて、本人の代わりに国に納めます。 これを源泉徴収(げんせんちょうしゅう)といいます。
毎月引かれる所得税の額は、国税庁の「源泉徴収税額表」で決まります。このとき、会社に「給与所得者の扶養控除等申告書」を出しているかどうかで、使う欄が変わります。
| 扶養控除等申告書 | 使う欄 |
|---|---|
| 出している | 甲欄(こうらん) |
| 出していない | 乙欄(おつらん) |
扶養控除等申告書は、毎年、その年の最初の給料をもらう日の前日までに会社に出します(年の途中で会社に入った人は、入社して最初の給料をもらう日の前日まで)。2か所以上の会社から給料をもらっている人は、扶養控除等申告書を出した会社の給料が「主たる給与」(甲欄)、ほかの会社の給料が「従たる給与」(乙欄)になります。乙欄が使われると、毎月引かれる所得税が多くなります。入社のときの書類について、くわしくは正社員の必要書類 新卒・転職・海外からの入社手続きガイドや、アルバイトの必要書類:初日に揃えるものと入社手続きで紹介しています。
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(参照:国税庁 No.2511/国税庁 No.2520/国税庁 No.7411/国税庁「扶養控除等の(異動)申告」/国税庁「源泉徴収税額表(令和8年分)」)
4. 住民税
住民税は、1月1日に日本に住所があり、決まった金額以上の給料などをもらっている人が、住んでいる市区町村に払う税金です。 外国籍の人も同じです。
1年目に住民税が引かれない理由
住民税の額は、前の年の1月1日から12月31日までにもらった給料などで決まります。そのため、日本で働き始めたばかりの年は、前の年の日本での給料がないので、住民税が引かれないことが多いです。働き始めた次の年の6月ごろから、住民税が給料から引かれるようになり、手取りが減ったように感じます。ただし、前の年に日本で決まった金額以上の収入があった人(たとえば、留学中にアルバイトをしていた人)は、会社で働き始めた年から住民税が引かれることがあります。住民税がかからない収入の目安は、2026年度から変わりました。くわしくは住民税の『103万の壁』が123万に。2026年6月、パート配偶者・学生バイトの手取りはどう変わる?で紹介しています。
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給料からの天引き(特別徴収)
会社員の場合、会社が給料から住民税を引いて、本人の代わりに市区町村に払います。これを特別徴収(とくべつちょうしゅう)といいます。たとえば広島市は、特別徴収は1年分の税額を6月から次の年の5月までの12回に分けて、給料から引く方法だと案内しています。総務省は、会社で働く人は基本的にこの方法で、自分で市区町村に払う必要はないと案内しています。
一方、自分で払う方法を普通徴収(ふつうちょうしゅう)といいます。毎年6月ごろ、市区町村から納付書が届き、金融機関などで払います。
住民税を払わないと
総務省は、払うべき住民税を払っていない場合、在留期間の更新などが許可されないことがある、と案内しています。会社を辞めたあとや、自分で払う場合は、払い忘れに気をつけましょう。
(参照:総務省「外国人の方の個人住民税について」/総務省「個人住民税」/広島市「給与からの引き落とし(特別徴収)」)
5. 社会保険料
会社で働く人の多くは、会社の健康保険と厚生年金、雇用保険に入ります。保険料は、給料から引かれます。
厚生年金
厚生年金の保険料は、毎月の給料(標準報酬月額)と賞与に、保険料率をかけて計算します。保険料率は18.3%で、会社と本人が半分ずつ負担します。 本人が払うのは、標準報酬月額と標準賞与額(賞与の額)の9.15%分です。
健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金
協会けんぽの健康保険料率は、都道府県ごとに違います。給料の額ごとの保険料は、協会けんぽの「保険料額表」で確認できます。
40歳から64歳までの人は、健康保険料に介護保険料が加わります。協会けんぽの介護保険料率は、2026年3月分から1.62%です(会社と本人が半分ずつ払います)。
2026年4月分からは、子ども・子育て支援金の制度が始まりました。協会けんぽの子ども・子育て支援金率は0.23%です(会社と本人が半分ずつ払います)。支援金の仕組みは、子ども・子育て支援金:外国人が知っておくべき負担額と永住権(PR)への影響 (2026最新版)で紹介しています。
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帰国するときの年金(脱退一時金)
日本国籍がない人が、厚生年金や国民年金の資格を失って日本を出た場合は、日本に住所がなくなった日から2年以内に、「脱退一時金」を請求できます。受け取れる条件があるので、日本年金機構のページで確認しましょう。
(参照:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」/協会けんぽ「令和8年度保険料額表」/協会けんぽ「介護保険料率」/協会けんぽ「子ども・子育て支援金率」/厚生労働省「令和8年度の雇用保険料率について」(PDF)/日本年金機構「脱退一時金の制度」)
6. 年末調整
年末調整は、会社が1年間に引いた所得税と、本当の税額との差を、年の終わりに計算し直す手続きです。 引きすぎていれば戻り、足りなければ追加で引かれます。
年末調整の対象になる人
国税庁によると、12月に行う年末調整の対象は、会社に1年を通じて勤めている人や、年の途中で就職して年末まで勤めている人です。ただし、1年間の給料が2,000万円を超える人などは対象になりません。また、年末調整を受けるには、扶養控除等申告書を出していることが前提です。従たる給与(乙欄の給料)は、基本的に年末調整されません。年末調整されなかった給料と、ほかの所得の合計が1年で20万円を超える人などは、確定申告が必要です。
年の途中で、海外の支店に転勤するなどの理由で非居住者(日本に住所がない人など)になった人は、そのときに年末調整をします。
会社に出す書類
年末調整の時期(年の終わりごろ)になると、会社から書類を出すように言われます。主なものは、扶養控除等申告書や、生命保険料などの控除を受けるための申告書です。生命保険料の控除を受ける人は、払った金額を証明する書類も一緒に出します。
国外に住む家族を扶養に入れるとき
母国に住む家族を扶養に入れて扶養控除を受ける場合は、その家族が親族であることを示す「親族関係書類」と、生活費などを送ったことを示す「送金関係書類」を、会社に出したり見せたりする必要があります。30歳以上70歳未満の家族で、海外に留学している人の場合は「留学ビザ等書類」も必要です。38万円以上を送っていることで扶養に入れる場合は、「送金関係書類」の代わりに「38万円送金書類」が必要です。書類を出す時期は書類によって違うので、会社の担当者に確認しましょう。2023年分からは、国外に住む30歳以上70歳未満の家族は、日本から海外へ留学した人、障害者、本人から38万円以上の送金を受けている場合などを除いて、扶養控除の対象になりません。
年末調整のあとは
年末調整で、所得税の手続きは基本的に終わります。ただし、副業などの所得が1年で20万円を超える人などは、自分で確定申告をする必要があります。また、医療費控除を受けるときや、ふるさと納税をしてワンストップ特例を使わないときも、確定申告で控除を受けます。ふるさと納税のしくみは、外国人のふるさと納税ガイド 仕組み・限度額・ワンストップ特例のやり方で紹介しています。
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(参照:国税庁 No.2662/国税庁 No.2665/国税庁「国外居住親族に係る扶養控除等Q&A」(PDF)/国税庁 No.1900/国税庁 No.1180/国税庁 No.2520/国税庁 No.1120/総務省「ふるさと納税 税金の控除について」/国税庁「保険料控除の申告」)
7. 手取りはどう計算する?
手取り(差引支給額)は、次の流れで計算されます。
- 支給の合計(基本給+残業代+手当など)を出す
- 社会保険料(健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金・雇用保険)を引く
- 社会保険料を引いた額などをもとに、源泉徴収税額表で所得税を出して引く
- 住民税(前の年の所得で決まった額)を引く
- 残った金額が手取り
健康保険料は都道府県によって違い、住民税は前の年の所得で決まるので、同じ給料でも、人によって手取りは変わります。自分の金額は、給与明細と、協会けんぽの保険料額表、住んでいる市区町村からの住民税の通知で確認できます。
(参照:国税庁 No.2511/協会けんぽ「令和8年度保険料額表」)
8. 会社を辞めるとき・日本を離れるとき
住民税の残り
会社を辞めると、残りの住民税は自分で払う(普通徴収)のが基本です。 ただし、会社に、残りの住民税を全部、最後の給料や退職金から引いてもらう方法(一括徴収)もあります。総務省は、1月から5月に会社を辞める場合は、本人の申し出がなくても、会社が一括徴収をするとしています。
日本を離れる場合
日本を離れるまでに住民税を払えない場合は、出国の前に、日本に住んでいる人の中から、自分の代わりに税金の手続きをする人(納税管理人)を決めて、住んでいる市区町村に届け出る必要があります。1月2日やそれより後に日本を出た場合でも、その年の1月1日に日本に住所があれば、住民税はかかります。
年金
厚生年金に入っていた人が日本を離れたら、条件を満たせば、日本に住所がなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求できます(5章を参照)。
(参照:総務省「外国人の方の個人住民税について」)
FAQ(よくある質問)
Q: 日本に来て1年目、住民税が引かれていません。大丈夫ですか?
A: 住民税は、前の年の給料などで決まります。日本で働き始めたばかりの年は、前の年の日本での給料がないので、住民税が引かれないことが多いです。働き始めた次の年の6月ごろから引かれるようになります。ただし、前の年に日本で決まった金額以上の収入があった人(たとえば、留学中にアルバイトをしていた人)は、会社で働き始めた年から住民税が引かれることがあります。
Q: 2つの会社で働いています。扶養控除等申告書はどちらに出せばいいですか?
A: 扶養控除等申告書を出した会社の給料が「主たる給与」、ほかの会社の給料が「従たる給与」になります。従たる給与には源泉徴収税額表の乙欄が使われるので、引かれる所得税が多くなります。2か所から給料をもらっている人は、確定申告が必要になることがあります。
Q: 厚生年金の保険料は、全部自分で払っているのですか?
A: いいえ。厚生年金の保険料率は18.3%で、会社と本人が半分ずつ負担します。
Q: 母国の家族を扶養に入れられますか?
A: 条件を満たせば入れられますが、親族関係書類と送金関係書類が必要です。必要な書類は家族の年齢や状況によって違います。2023年分からは、国外に住む30歳以上70歳未満の家族は、日本から海外へ留学した人、障害者、本人から38万円以上の送金を受けている場合などを除いて、対象になりません。
Q: 会社を辞めたら、住民税はどうなりますか?
A: 残りの住民税は、自分で払うのが基本です。会社に頼んで、最後の給料や退職金からまとめて引いてもらうこともできます。1月から5月に辞める場合は、会社がまとめて引きます。
Q: 帰国したら、払った年金はどうなりますか?
A: 日本国籍がない人が、厚生年金や国民年金の資格を失って日本を離れた場合は、日本に住所がなくなった日から2年以内に、脱退一時金を請求できます。条件は日本年金機構のページで確認しましょう。
Key Takeaways(まとめ)
- ✅ 給与明細は「支給」「控除」「差引支給額(手取り)」の3つに分かれる
- ✅ 所得税は毎月の給料から源泉徴収される。扶養控除等申告書を出さないと乙欄になり、引かれる額が多くなる
- ✅ 住民税は前の年の所得で決まる。日本で初めて働く年は引かれないことが多く、働き始めた次の年の6月ごろから天引きが始まる
- ✅ 厚生年金は18.3%を会社と半分ずつ。健康保険料率は都道府県ごとに違う
- ✅ 2026年4月分から子ども・子育て支援金が始まった。雇用保険の本人負担は2026年度は0.5%
- ✅ 年末調整で所得税は基本的に精算される。国外の家族を扶養に入れるには書類が必要
- ✅ 住民税を払わないと、在留期間の更新などに影響することがある。辞めるときや帰国するときは残りの住民税に注意
給与明細は、毎月の生活にかかわる大切な書類です。わからない項目があれば、会社の担当者や、住んでいる市区町村に早めに聞いてみましょう。