いま何が起きているのか?
2026年3月、SNSで「ビザの更新費用が何十万円にもなる」という話が広まりました。日本で長く暮らす人にとっては家計に直結する話で、ざわついたのを覚えている方も多いはずです。
この話のきっかけは、政府が国会に提出した改正入管法案(外国人の在留手続きを扱う法律の見直し案)でした。法案は3月10日に閣議決定され、4月に衆議院を通過、そして5月29日の参議院本会議で可決・成立しました。これでビザ手数料の「法律上の上限額」が正式に引き上げられたことになります。
ただし「成立=明日から高くなる」ではありません。法律で決まったのはあくまで「上限の天井」で、実際に窓口で払う金額はこれから「政令」(法律を実行するために政府が定める具体的なルール)で決められます。施行は2026年度中(2027年3月末まで)の予定です。
この記事では、次の3つを順を追って整理していきます。
- 何が決まったのか:法律で引き上げられた手数料の上限額
- 実際にいくらになりそうか:報道されている見込み額と在留期間別の試算
- 今やるべきこと:手数料が変わる前に準備しておきたい5つのアクション
(参照:時事通信「外国人の永住手数料、上限30倍に引き上げ 改正入管法が成立」)
TL;DR(この記事でわかること)
- 2026年5月29日、改正入管法が参院本会議で成立した
- 手数料の法律上の上限が引き上げられた。更新・変更は10万円、永住許可は30万円
- 実際の手数料は在留期間によって変わる見込み。3か月=約1万円、5年=約7万円、永住=約20万円
- 経済的に困っている人向けの減額・免除の仕組みも法律に含まれている
- JESTA(電子渡航認証制度)も新設された。短期滞在者の入国審査を電子化する仕組み(2028年度以降に導入予定)
- 新しい手数料の運用開始は2026年度中(2027年3月末まで)の見込み
免責事項: 本記事は時事通信・日本経済新聞・東京新聞等の報道および出入国在留管理庁の発表をもとに整理しています。情報は2026年6月1日時点のもので、今後の政令によって実際の手数料額は変わる可能性があります。
時系列で理解する:手数料見直しの4ステップ
手数料の変更は突然すべてが決まったわけではなく、段階的に進んできました。
ステップ1:2025年4月1日(施行済み)
まず、すでに始まっている値上げです。2025年4月1日から、窓口で支払う手数料が以下のように変わりました。
| 申請の種類 | 改定前 | 改定後(窓口) | オンライン申請 |
|---|---|---|---|
| 在留資格変更許可申請 | ¥4,000 | ¥6,000 | ¥5,500 |
| 在留期間更新許可申請 | ¥4,000 | ¥6,000 | ¥5,500 |
| 永住許可申請 | ¥8,000 | ¥10,000 | — |
オンラインで申請した場合は500円安くなります。
(参照:出入国在留管理庁「在留手続等に関する手数料の改定」)
ステップ2:2026年1月 — 政府の方針発表
政府は外国人を受け入れるための新しい方針を発表しました。その中で、「2026年度中にビザの手数料を引き上げる」という目標が示されました。手数料だけでなく、入管システムの強化や電子化なども含まれています。
(参照:首相官邸「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策(令和8年1月23日関係閣僚会議決定)」)
ステップ3:2026年3月10日 — 閣議決定・国会提出
政府は新しい入管法の改正案をまとめて国会に提出しました。
| 申請の種類 | これまでの法律の上限 | 改正案の新しい上限 |
|---|---|---|
| 在留資格の変更・更新など | 1万円 | 10万円 |
| 永住許可申請 | 1万円 | 30万円 |
ここで大事なのは、提案されたのは「法律の天井(上限額)を引き上げる」ことであり、「すぐに10万円や30万円を払う」わけではないということです。
今までも法律の上限は1万円でしたが、実際の料金はずっと4,000円や6,000円でした。「上限を広げること」と「実際にいくら払うか」は別です。本当の手数料の金額は、法律が決まった後に「政令」で決められます。
(参照:時事通信「入管法改正案を閣議決定」)
ステップ4:2026年5月29日 — 参院本会議で可決・成立
4月に衆議院を通過した改正案が、5月29日に参議院本会議で可決され、正式に法律として成立しました。自民党・公明党・日本維新の会・国民民主党が賛成、立憲民主党などが反対しました。
「上限額」と「実際に払う金額」は違います。上限10万円でも、実際の手数料は在留期間によって1万円〜7万円程度になる見込みです。
(参照:日本経済新聞「在留外国人の資格更新、手数料上限10万円に上げ 改正入管法が成立」)
実際にいくら払うことになるのか
法律で決まったのは「上限額」です。実際に窓口で払う金額は、これから「政令」で決まります。現時点で報道されている見込み額は以下の通りです。
更新・変更の手数料(在留期間別)
| 在留期間 | 現在の手数料 | 新しい手数料(見込み) |
|---|---|---|
| 3か月 | ¥6,000 | 約1万円 |
| 1年 | ¥6,000 | 数万円 |
| 3年 | ¥6,000 | 数万円 |
| 5年 | ¥6,000 | 約7万円 |
(参照:日本経済新聞「在留資格の更新手数料上げ、5年は7万円程度に 永住許可は20万円程度」)
永住許可の手数料
| 現在 | 新しい手数料(見込み) | |
|---|---|---|
| 永住許可申請 | ¥10,000 | 約20万円 |
この金額はまだ「見込み」です。正式な金額は政令が発表されるまで確定しません。決まり次第、この記事を更新します。
減額・免除の仕組み
お金に困っている人が手数料を払えなくてビザの更新ができなくなる事態を防ぐため、減額・免除の制度も法律に盛り込まれました。具体的にどんな条件で使えるかは、今後の政令で決まります。
(参照:東京新聞「入国事前審査の創設、参院委可決 在留手数料の上限引き上げも」)
あなたの家計にどう影響するか
ケース1:ひとりで日本で働いている人
1年ごとにビザを更新していて、新しい手数料が仮に3万円になった場合。
| 項目 | 今までの費用 | 値上げ後の費用 |
|---|---|---|
| 1回の更新費用 | ¥6,000 | ¥30,000 |
| 5年間の合計(1年×5回) | ¥30,000 | ¥150,000 |
| 5年間の合計(5年×1回) | — | ¥70,000 |
一度で5年ビザをもらえたら、5年間の費用は7万円で済みます。長いビザを目指すメリットが今まで以上に大きくなります。
ケース2:家族で住んでいる人(配偶者 + 子ども1人)
| 項目 | 今までの費用(3人分) | 値上げ後の費用(3人分) |
|---|---|---|
| 1回の更新費用 | ¥18,000 | ¥90,000 |
| 5年間の合計(1年×5回) | ¥90,000 | ¥450,000 |
家族が多くなると負担は大きくなります。家計への影響を早めに計算しておくことが大切です。
ケース3:永住権を取りたい人
| 今の手数料 | 値上げ後(見込み) | |
|---|---|---|
| 永住許可申請 | ¥10,000 | 約¥200,000 |
永住権の条件を満たしている人は、手数料が変わる前に申請を検討する価値があります。
JESTA(電子渡航認証制度)とは
今回の改正入管法では、手数料の値上げだけでなく、JESTAという新しい仕組みも作られることが決まりました。
JESTAは、アメリカの「ESTA」やヨーロッパの「ETIAS」と似た制度です。短期滞在ビザが免除されている国から日本に来る人が、出発前にオンラインで名前や渡航目的などの情報を登録し、入国の許可をもらう仕組みです。JESTAの認証がない場合、飛行機への搭乗が拒否される可能性があります。
JESTAは短期滞在者向けの制度で、すでに日本に住んでいる人には直接関係ありません。ただし、ビザ免除国の家族や友人が日本に遊びに来る時には必要になります。導入は2028年度以降の予定です。
(参照:時事通信「外国人の永住手数料、上限30倍に引き上げ 改正入管法が成立」)
なぜ値上げするのか
1. 外国人住民数の急増
2025年6月末時点で、日本に住む外国人は約396万人(前年末比5.0%増)と過去最多を更新しました。入管の業務量は急増しており、審査体制の維持・強化にコストがかかっています。
(参照:出入国在留管理庁「令和7年6月末現在における在留外国人数について」)
2. 1982年から変わっていなかった上限額
手数料の法律上の上限は1万円のままでした。これは1982年に決まった金額です。政府は、入管のシステムを使うためのコストを「申請する本人がもう少し負担する」形に変えようとしています。
3. 外国人政策全体の財源として
今回の値上げで増えたお金は、入管の審査をIT化して早くしたり、日本語学習をサポートしたり、外国人向けの相談窓口を作るための資金に使われる予定です。手数料が上がった分、サポートが本当に良くなるのかは、これから注視する必要があります。
(参照:日本経済新聞「在留外国人の資格更新、手数料上限10万円に上げ」)
今すぐできる5つのアクション
法律は成立しましたが、新しい手数料が適用されるまでにはまだ準備の時間があります。
アクション1:自分の更新スケジュールを確認する
在留カードを見て、期限がいつか確認しましょう。次の更新がいつ来るか、スマホのカレンダーに「カード期限の3か月前」でアラームをセットしておくと安心です。
アクション2:税金・年金・健康保険をきっちり払う
ビザの更新や永住権の申請で一番大切なのは、住民税・年金・健康保険の支払い実績です。未払いがある人は今すぐ役所で確認して払いましょう。手数料が高くなれば、「不許可になって申請をやり直す」ことで余計にお金がかかります。
アクション3:「5年ビザ」をもらうための準備をする
在留期間が長いほど手数料がお得になる見込みです。できるだけ「1年」ではなく「3年」や「5年」の長いビザを目指しましょう。
- 同じ会社で長く働く(できれば3年以上)
- 収入が安定して継続している(永住ガイドラインでは「公共の負担にならず、安定した生活が見込まれること」が要件)
- 税金や社会保険を必ず払う
アクション4:届け出を忘れない
引っ越しをしたとき、仕事を変えたとき、結婚や離婚をしたときは、14日以内に入管や役所に届け出をしましょう。届け出を忘れると「ルールを守らない人」と見られてしまい、長いビザがもらいにくくなります。
アクション5:永住権を狙うタイミングを考える
永住権を取れば、ビザの更新も手数料の支払いも不要になります。10年以上日本に住んでいる人や、「高度人材ビザ」の基準を満たせる人は、手数料が変わる前に永住権の申請準備を始めましょう。
(参照:出入国在留管理庁「永住許可申請」)
FAQ:よくある質問
Q: 今すぐ更新の手数料が10万円になるの?
A: いいえ。10万円は「法律で設定できる上限額」です。実際の手数料は政令で決まり、在留期間によって1万円〜7万円程度になる見込みです。今のところ窓口での手数料は変わっていません(更新・変更は6,000円)。
Q: いつから新しい手数料が始まるの?
A: 政府は2026年度中(2027年3月末まで)の施行を目指しています。正確な日付は政令が発表されるまでわかりません。
Q: 手数料が払えない場合はどうなるの?
A: 経済的に困っている人のための減額・免除の仕組みが法律に含まれています。具体的な条件は今後決まります。
Q: 家族(配偶者・子ども)のビザも値上げされる?
A: はい。変更・更新はどんなビザの種類でも値上げの対象になります。家族が多い人は早めに費用を計算しておきましょう。
Q: 永住権、値上げされる前に申請したほうがいい?
A: 永住権の条件(日本に住んでいる年数、税金の支払い実績など)をすでに満たしているなら、早めに申請するのも良い選択です。ただし、条件を満たしていないのに焦って申請しても不許可になるので、まずは自分の状況を確認してください。
Q: JESTAは日本に住んでいる自分にも関係ある?
A: JESTAは短期滞在者(観光客など)向けの制度なので、すでに在留資格を持っている人には直接関係ありません。ただし、ビザ免除国の家族や友人が日本に来る際には必要になります。導入は2028年度以降の予定です。
まとめ
ビザ更新で最大10万円、永住で最大30万円。5月29日に成立した改正入管法で、こうした上限額が正式に決まりました。とはいえ、今日明日でこの金額になるわけではありません。実際にいくらになるかは政令で決まり、施行は2026年度中(2027年3月末まで)の予定です。
つまり、今のうちなら「今の手数料」のまま動けます。残り10ヶ月ほどでやれることは意外と地味です。まずは在留カードの期限を確認してください。住民税や年金に未払いがあれば、役所で早めに清算しておきましょう。
この記事のおさらい
- 改正入管法は5月29日に成立。手数料の法律上の上限は更新10万円・永住30万円に
- 実際の額は在留期間で変動する見込み(3か月=約1万円、5年=約7万円、永住=約20万円)
- 施行は2026年度中。今の料金(6,000円/10,000円)が使えるのは残り10ヶ月ほど
- 3年・5年の長いビザを狙うメリットが拡大
- 永住の条件をすでに満たしている人は、値上げ前の申請も検討の余地あり
新しい政令や施行日が決まり次第、この記事に追記していきます。